外耳の病気
耳のかゆくなる外耳湿疹、耳垢のつまった状態である耳垢栓塞、外耳炎などがあります。
耳垢には湿ったタイプと乾いたタイプの2種類あり、湿ったタイプは耳垢がたまりやすいです。小さなお子さんは耳の穴が小さいため、ご高齢の方は耳垢を外へ押し出す機能が低下するため、耳垢がたまりやすくなります。
耳垢は外耳道の途中ではがれてきますが、耳掃除の時に、はがれかけの箇所を気にしていじってしまう人がいます。耳垢栓塞や外耳炎の原因になりますので、1センチ以上奥は気になっても決してご自身ではいじらないように気をつけましょう。
*写真は鼓膜にはりつくようにたまった耳垢です。
中耳の病気
風邪などをきっかけに急に痛みのでる急性中耳炎、痛みは少ないものの聞こえが悪くなる滲出性中耳炎、耳の癌ともいわれる真珠腫性中耳炎など、中耳炎にもさまざまな種類があります。
正常な鼓膜は半透明の膜でライトをあてて見た時に、写真のようにぴかっと光の反射が起こります。たるんだ鼓膜ではこの光の反射は見えません。
3歳以下のお子さんは鼻風邪をひいた時に、中耳炎になりやすいです。耳と鼻をつなぐ管(耳管といいます)が短くて水平に近いこと、鼻の奥にアデノイドという組織があること、鼻がうまくかめないことなどが原因です。成長とともに軽快することも多いですが、中耳炎の具合が悪い時には、鼓膜を切開したり、鼓膜にチューブをしばらくはめるような処置が必要になります。
*写真は正常な右耳の鼓膜です。
難聴について
当院では純音聴力検査、語音聴力検査、耳鳴検査、補聴器適合検査、聴覚情報処理障害の検査など各種、難聴の正確な評価のためのさまざまな検査が行えます。内耳や聴神経、聴覚中枢の障害が原因の難聴は、根本的な治療ができない場合も多いですが、ご自身の聞こえについて理解し、対策をたてることで、日常会話の困りごとを減らすことはできます。
左図は純音聴力検査の結果です。縦軸が音の大きさ、横軸が音の高さで、被検者の聞こえる最も小さい音をプロットしていきます。
補聴器には主に
耳かけ型、耳あな型、ポケット型の3種類があります。
ポケット型はコードがついているため動きが制限されるので、使用する人は少ないです。
現在、ほとんどの補聴器がデジタル補聴器でパソコンで音の調節を行います。しかし、耳の形、耳栓の形・はまり具合などでコンピューター上の設定通りには音が伝わっていないことが多々あります。そのような場合は補聴器適合検査を行い、ずれを修正する必要があります。
耳かけ型補聴器は汎用性が高いですが、マスクやメガネと耳の後ろでケンカしてしまうのが、最大の欠点です。
オーダーメイドの耳あな型補聴器の型を作成しているところです。
マスクやメガネの邪魔になりませんが、耳をふさぐためこもり感がでやすいこと、耳垢づまりを起こしやすいこと、価格が高めであることが欠点です。
聴覚専門外来は曜日によって内容が異なりますので、ご注意ください。
言語聴覚士による専門的な聴覚検査はいつでも対応可能となっています。純音聴力検査、語音聴力検査、ティンパノメトリーの他、アブミ骨筋反射、補聴器適合検査、聴覚情報処理障害の検査、各種内耳機能検査が行えます。有毛細胞の反応をみる耳音響放射検査、脳波によって音に対する反応をみる聴性脳幹反応検査(ABR)・聴性定常反応検査(ASSR)は設備がなく、行えないため、必要に応じて検査のできる病院へご紹介しています。
補聴器はマキチエ、GNリサウンド、フォナック、オーティコン、シバントスは調整対応が可能です。月曜がマキチエ株式会社、金曜があかり補聴器による補聴器試聴・調整等を行っていますが、完全予約制となっています。パナソニック、スターキー、リオネット等は調整できる店舗へ情報提供をして調整していただきます。また、リオン軟骨導補聴器は必要時に日程を調整して対応しています。
新規補聴器を検討中の方に対しては店舗へご紹介する他、当院でも最大3カ月まで調整を繰り返しながらの貸出を行っています。きちんと補聴器をあわせるために適宜補聴器適合検査を行いながらの貸出になりますので、ご了承ください。
補聴器がなかなかうまく使用できない、一人暮らし等で会話の機会が少なく言葉を聞き取る力が低下している、といった場合は聴覚リハビリテーションを行うことがあります。1-2週間に1回、30分前後の個別訓練を3カ月程行います。
耳鳴の方に対しては音響療法の指導を行っており、希望者に対してはサウンドジェネレーター付補聴器を貸出しています。こちらも最大3カ月までの貸出です。
全日本難聴者・中途失聴者団体連合会、全日本ろうあ連盟、愛知県難聴者・中途失聴者協会、各自治体の要約筆記サークルの活動を賛助しており、会報等を受付に置いています。ご活用ください。
アレルギー性鼻炎は2019年の調査では回答者の約半数が罹患しており、中でもスギ花粉によるアレルギー性鼻炎は39%と最多でした。また、ダニやハウスダストが原因の通年性のアレルギー性鼻炎は25%でした。
アレルギー性鼻炎に対する薬物療法には、抗アレルギー薬の内服、点鼻薬、近年ではアレルギー反応を起こすIgEを抑える注射薬もあります。1種類だけではなかなか抑えきれない場合は作用機序の違う薬をいろいろと組み合わせるとよいです。また、症状がひどくなってからではなく、軽いうちから薬をきちんと使用して燃え広がらないようにするのがポイントです。
当院では、効き目、眠気、お薬代、服用回数など、何を重視するかを考慮して個々のニーズにあわせた処方を心がけています。
さて、アレルギー反応をそもそも起こりにくくする治療法として免疫療法というものがあります。注射による免疫療法は歴史が古いですが、2015年頃からより簡便な舌下免疫療法が行えるようになりました。私自身もスギ花粉症があるので、販売されてすぐに自分で試してみましたが、アレルギー反応を薬で抑えるのではなく、そもそも反応が起こらなくなるので、頭の重たい感じなどがなくなります。スギの舌下免疫の新規導入はスギ花粉飛散時期には行えませんので6月~11月に行います。ダニの舌下免疫は新規導入できますので、ご興味のある方はお問合せください。導入時は3週連続で受診していただく必要がありますが、その後は1-2カ月に1回の受診で3年続けます。
*写真上:正常鼻粘膜 写真下:腫れてむくんだ鼻粘膜
アレルギーは、清潔すぎる環境で暇を持て余した免疫細胞が反応しなくてもよい異物に対して反応を起こしてしまう病気といえます。体を異物から守る免疫反応は非常に複雑ですが、上図に概略を示してみました。
まず、花粉やダニなどのアレルゲンが皮膚や粘膜にいる抗原提示細胞でとらえられると、Th2細胞という細胞を介して、そのアレルゲンに対する免疫応答が始まります。主にそのアレルゲンに対するIgEという物質が作られるようになると肥満細胞にIgEがくっついて、ある一定の量を超えると、そのアレルゲンに対して肥満細胞がヒスタミンやロイコトリエンなどを分泌して、アレルギー反応を起こします。ヒスタミンは主にくしゃみや鼻水、ロイコトリエンやプラスタグランジンは血管を拡張させて鼻づまりを起こします。また、ロイコトリエンなどの物質は好酸球を活性化させます。薬によってアレルギーのどの部分に効くかが違いますが、軽い方の場合はどれか一種類でくのに対し、重症の方ではお薬を組み合わせることで効果をあげます。
ステロイドは免疫反応全体を抑制するので効果が強いですが、他にも全身の細胞に様々に影響するため、基本的に点鼻薬などの外用薬を使い、内服するのは最終手段です。ヒスタミンに対する薬が最も一般的に使われますが、効果が乏しい場合はロイコトリエンやプロスタグランジンなどに対する薬を加えます。
舌下免疫療法は多量のアレルゲンをわざと抗原提示細胞に与えることで免疫反応が進むのを抑える治療になります。ダニは繁殖期の春と死骸からたくさんアレルゲンがでる秋を中心に年中、アレルギー反応を起こし、他のアレルゲンによるアレルギー症状も悪くします。即効性は乏しいですが、3カ月ぐらい使用するとなんとなく鼻が楽になってきます。近年ではダニアレルギーとアトピー性皮膚炎のあるお子さんで早めにダニの舌下免疫療法を始めることで、鼻炎や喘息の発症が抑えられる可能性が指摘されています。
重症のスギ花粉症で使用できるゾレアという注射の薬はIgEを抑える薬です。2月~5月に使用しますが、症状がひどくなってからでは効果がうすくなってしまうので、ひどくなる前に使用する必要があります。投与する量は体重とその人の持っているIgEの量で変わりますので、投与開始1年以内のIgEの採血結果が必要です。
コロナの後遺症で慢性上咽頭炎というものがあります。写真左側は上咽頭(鼻とのどの間)をカメラで撮影したものです。上の写真では痰がついているのが、下の写真では血がにじんでいるのがわかります。副鼻腔炎や上咽頭炎などで痰がのどへ落ちていくと右上の写真のように喉頭周囲にも痰がからんで炎症を起こします。内服薬だけではなかなか症状が改善しない場合、できるだけ薬は内服したくない場合などはブログにも記載してある上咽頭擦過療法が効果的です。
慢性的な痰がらみやのどの違和感では上咽頭炎の他に咽喉頭酸逆流症といって胃酸がのどまであがってくる病気も頻度が高いです。咽喉頭酸逆流症では泡状の付着物が観察され、右下の写真のように喉頭に肉芽という腫瘍のようなものができることもあります。
*写真
左上:痰のついた上咽頭 左下:血のにじんだ上咽頭 右上:痰のからんだ喉頭 右下:肉芽のできた喉頭